杉谷遼 活動ブログ:世界をより良い場所にするために

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災害と向き合うということ(1)

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こんにちは。杉谷遼です。

12日に上陸した台風19号は過去最大の規模で、関東・甲信越を中心に甚大な被害をもたらしました。今も被害にあわれ、苦しんでいる方々がいらっしゃり、今回この記事を書くか迷いましたが、災害の直後で皆さんの記憶が新しいうちに届いてほしい、考えてほしいと思ったため、今回と次回の2回に分けて、災害について考えていることを書こうと思います。

そもそも、僕は大学の卒業論文、大学院の修士の研究のどちらも災害分野に身を置いていたため、災害というものに関してある程度の知見があります。そんな僕が今回の台風19号という災害を通してみなさんに考えてほしいことを書いていきます。

 

目次

1)災害とは何か

2)脆弱性という概念

3)脆弱性を乗り越えるために

 

1)災害とは何か

日本は災害大国だということがよく言われていますが、そもそも災害とは何なのでしょうか?災害による被害は以下のように定義されています。

災害の被害=ハザード×社会システム

専門用語が出てきたため、一つ一つ簡単に解説していきます。ハザードとは自然現象の客観的な強度のことです。例えば今回の台風で言えば雨量、最大瞬間風速、中心気圧等、今回の台風を数値で表す指標がたくさんありました。他にも地震で言えばマグニチュードや震度等で表すことが多いと思います。一般的に災害というとこのハザードの大きさのことをイメージする方が多いのではないでしょうか。

しかし、災害はこのような自然現象の強度のみでは定義されません。これに社会システムという自然現象ではなく、人為的な側面が入ってきて初めて災害の被害となるのです。これは少し考えてみれば当たり前のことですが、誰も住んでいない場所で大規模なハザードが発生しても、そこには社会が存在しないため、この場合の被害は0となります。つまり社会がない場所、人が住んでいない場所では災害の被害は0なのです。

ではこの社会システムはどのように出来ているのでしょうか。

社会システムは以下のように定義されています。

社会システム=曝露×脆弱性

曝露とはどれほどその社会がハザードにさらされるかです。例えば今回の台風で言えば洪水、河川の氾濫というハザードに対して、河川沿いの地域は曝露が高かったと言えます。逆に高台の地域は曝露が低いと言えます。

また、脆弱性とはそのハザードに対する社会の弱さを意味します。例えば今回河川の氾濫というハザードに対して、死者が出てしまった地域もあれば、避難退避がしっかりできており死者を出さなかった地域もあります。同じ曝露であっても大きな被害となる地域と小さな被害で抑えられる地域があり、その違いが脆弱性という概念です

 

2)脆弱性の形成

ここで、社会の脆弱性がどのように形成されるかを考えてみましょう。そもそも河川の氾濫が起きる可能性のある地域に多くの人が住んでいる状態自体が非常に脆弱であり、社会自体が気付かぬうちに脆弱になっていたことが、今回の台風被害だけでなく、東日本大震災や先月の台風15号の被害、九州地方での大洪水被害といった大きな被害を生む災害の根本的な原因にあります。

ではなぜこのように脆弱性が形成されていくのでしょうか。今回の台風を受けてTwitter上でこんな声が出ていたので紹介します。

https://togetter.com/li/1416315

都内近郊で浸水、冠水した地域の特徴は、、、という内容ですが、SNS上で話される内容にしてはかなり本質をついている指摘だと感じています。

仮説ベースではありますが、今回このような地域で浸水、冠水により人的、物的被害が大きく出たのは、都市の再開発、地域のブランディングという社会の側面が大きく関わっていると思います。特に田園調布や二子玉川と聞くと、高級住宅街があるといったイメージがあるのではないでしょうか。それに合わせて商業施設を建てたり、そこに住むこと自体がステータスになるような流れを作り、この土地に多くの人が住むように促してきたのは紛れもなく政治的な側面であると考えています。元来水害への曝露が高いにも関わらず、リブランドをして人気住宅地とすることにより、人が住まなかった地域に人が住むようになり、高級住宅街にすることでお金がその土地に落ちる、そのようにしてこの脆弱性は形成されてきたのだと考えています。

 

3)脆弱性を乗り越えるために

このような脆弱性を乗り越えるためには、僕たち一人一人が社会というものの動きに対して感度を高くもち、疑問を投げかける姿勢でいることが必要です。

社会の動きに対してなすがままで思考停止してしまうと、大きな力が動かす方向へと流れて行ってしまいます。都市開発をする際に、誰もその地域の脆弱性を考えてはくれません。ほとんどの場合大切なことは、どれくらいの人がここに住み、どれほどの経済的な価値を生み出すのかです。災害といういつ起きるかわからないリスクと目の前に確実に生み出される利益を正しく判断できる人はほとんどいません。(これは自分が判断する側になっても同じことだと思います。それほどリスクによるコストと利益を適切に評価することは難しいです。)

だからこそ、判断する人に任せてはいけないと思います。僕たちがしっかりと思考し、判断し、行動することが必要なのです。よく言われていることですが、自分の身は自分で守るというのはかなり本質を突いた言葉だと感じています。

 

以上のことをまとめると、今回の台風を受けてまず考えてほしいことは、災害の被害は社会システムの脆弱性という形で日常生活に埋め込まれていることです。そしてそれに対して疑問を持たない限り、僕たちは気付かぬうちに脆弱な社会を形成し、ハザードに対して非常に弱くなっているのです。だからこそ、今日この日から、自分の暮らす社会をしっかりと見つめなおしてください。疑問を持ってください。それが災害と向き合うことの第1歩だと思います。

 

※今回はこの記事上で募金、支援を呼びかけることはしませんが、募金、ボランティアといった支援を必要としている被災者の方々は多数存在します。助け合う社会のためにも。ぜひともご協力をお願いいたします。(僕も募金という形で支援します。)

 

今回も記事を読んでいただきありがとうございました。

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